H28年度受講生GSC広島活動記録

PAG国際学会発表

PAG(the International Plant and Animal Genome Conference) in ASIA 2017 参加・発表報告


GSC広島ジャンプステージ(生物分野)         
広島県立西条農業高等学校 3年 羽根田 真妃瑠
2年 福田 栞奈  

 私たちは,GSC(グローバルサイエンスキャンパス)広島プログラムにより,平成29年5月28日~31日までの間,韓国のソウルで開催されたPAG in Asia 2017に参加しました。
 この学会では植物や動物に関して,大学はもちろん企業や研究者によるさまざまな研究発表が行われていました。今回私たちは,GSC広島および西条農業高等学校畜産科で先輩方から引き継ぎ今まで取り組んできた研究をさらにGSCで進展させ,その成果を世界の研究者に発信し,意見をもらうことだけでなく,英語で世界の人たちとどこまでコミュニケーションをとることができるかを目的として,国際学会に初めて参加しました。5月28日に広島空港から羽田を経由しソウルへ旅立ち,5月29日には講演会に参加し,5月30日の午前と午後の2回コアタイムにポスター発表を行いました。

 私たちは,GSC広島ジャンプステージの研究テーマである「Factors Influence Avian Sex Determination and Differentiation」というタイトルでポスター発表を行いました。研究内容は,鳥類の性決定・性分化に影響を及ぼす要因についての研究です。哺乳類の性染色体構成は,オスがXYでメスがXXとなっており,X染色体とY染色体の大きさは違うので,精子自体の比重により精子の選別ができ,特定の性別の精子を使うことで雌雄の産み分けができます。しかし,鳥類ではオスがZZでメスがZWとなっていることから,精子を選別して雌雄を産み分けることができません。そこで私たちは,温度によって性が変化する温度依存性決定という性決定様式をもっている爬虫類に着目しました。爬虫類から進化している鳥類もこの性決定様式をもっているのではないかと考え,実験しています。鳥類の雌雄の産み分けができれば,肉の生産者にはオスを,卵の生産者にはメスを提供できるようになり,産業利用に大きく役立つと考え,最終目的は雌雄の産み分けとしました。産業的に推奨されている孵化温度の37.9℃より1℃ずつ環境温度を変化させ,38.9~34.9℃まで変化させた。その結果,35.9℃では発生率もさほど変化せず,低くはありますが(1~2)/50の確率で性変化個体が出現し,孵卵温度変化が性変化の要因の1つに成り得るかもしれないと考えられました。発表はポスターの作成に加えて補足資料を使用しました。発表までに何度もポスターの修正をし,しっかりと準備をしてポスター発表に臨みました。
 さて,発表当日は,海外の研究者を中心に20名以上の方に聴いていただくことができました。その中で,同様に鳥類の孵化について研究していらっしゃるアラブ系の先生方に,「0.1℃ずつ孵化温度を変化させて私たちも実験したが,やはり性変化個体の出現数はわずかだったよ。」と聞き,世界には同様な実験にアタックしている人がいることに驚くと同時に,改めて自分たちがやっている実験研究の意義を再確認し,少しですが誇らしい気持ちになりました。
 また,「実験で証明したいことと,最終目標が少しずれているのでは?」というアドバイスや,「統計処理をしっかりやって数字で証明すれば確実になる」といったアドバイスもいただきました。
 私たちのつたない英語での発表をお聞きくださったみなさんから「高校生でこのような研究をしていることは素晴らしい」などのコメントは私たちを十分元気づけてくれました。
 英語での発表,質疑応答は,不安だらけでしたし,日本語では実験結果を十分に理解しているつもりでしたが,英語を使うと,頭が真っ白になりポスターの英文を読んでいるだけと散々でしたが,周りの方々が理解してくれようと努力してくださったおかげかもしれませんが,発表時間を乗り切ることができました。

 やはり言語や国民性の違う人々との交流は大変貴重な体験となりました。ここでもう少し英語だけではありませんが,言葉自体にも興味がわきました。もっと話ができたら色々こちらからも質問できたのにという思いは,今回参加した2人の共通の感想です。
 また,今回の国際学会発表を通じて,引き継いできた研究成果を世界の研究者に発信し,意見やアドバイスをいただくことができ,研究をさらに発展させ,研究を続けていきたいと心の底から思うことができました。これも大きな成果です。

羽根田真妃瑠
  英語によるポスターの作成や発表,コミュニケーション能力など,まだまだ私たち自身の言語能力が足りないところがあり,不安でいっぱいでしたが,無事に発表を終えることができました。また,海外での国際学会の場で自分たちの研究を発表できたことは,私の人生において非常に大きな一歩になりました。私は3年生なので大学に進学し,この成果を十分に生かしたいと考えています。

福田栞奈
  日本で日本語を使っての発表でも緊張してしまうのに,英語でポスター発表をすることになりとても緊張しました。英語でポスターを作ること,ポスターを英語で説明するために英文を考えることの難しさを実感しました。実際にソウルでやってみると緊張はしましたが,多くの外国の方々に発表を聞いてもらい,質問について一生懸命に英語で考える体験が新鮮でした。研究の内容も大切ですが,世界共通語である英語でのコミュニケーションの重要さに気付かされ,少し成長できました。この経験を生かし,これからの自然科学や語学の勉強や進路に役立てたいと思いました。

 最後になりましたが,本研究に対し,GSC広島ジャンプステージで指導助言をしてくださった広島大学大学院生物圏学研究科の堀内浩幸教授,西堀正英准教授をはじめ,今回の発表をTAとしてサポートしていただいた大学院生の伊藤真穂さん,英語の指導をしていただいたエジプトのモハメドガネム教授,西条農業高校の中野公隆先生をはじめとする高等学校の先生方,畜産科の同級生の皆さんに心より感謝いたします。
 さらには,このような国際学会に参加する機会を与えてくださいましたGSC広島プログラムの先生方に深く感謝いたします。大変ありがとうございました。

(左:2年 福田栞奈,右:3年 羽根田真妃瑠)